Dharmaconテクニカルサポート
第2回 コントロール試薬の使い方

バイオサイエンスメールでは8回シリーズで、お客様の実験サポートをテーマにした記事をお送りしています。前号と今号では、RNAi実験で信頼性の高い良好な結果を得るために有効なコントロール実験の組み立て方と製品の使用方法をお送りいたします。今号、第2回目のテーマは「コントロール試薬の使い方(ネガティブコントロール編)」です

(執筆担当 サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)バイオサイエンス事業本部 大島)

ネガティブコントロールsiRNAとは?

siRNA実験でのネガティブコントロールとは「どの遺伝子もノックダウンすることのないsiRNA」です。ただしこれは理想的な話で、実際のネガティブコントロールは「どの遺伝子に対してもノックダウンがなるべく少ないsiRNA」、具体的には「対象とする細胞の既知遺伝子配列との類似が最小の配列をもったsiRNA」となります。

ネガティブコントロールsiRNAの重要性

ネガティブコントロールsiRNAは、ターゲット遺伝子に対するsiRNAの配列特異的なノックダウンを評価する上で重要です。siRNAを使った実験では、siRNAがターゲットとする遺伝子(mRNA)のノックダウン効率の確認を行いますが、この確認のときの対照(コントロール)として、ネガティブコントロールsiRNAで処理したサンプルが必要になります。
ここで、ネガティブコントロールの「どの遺伝子に対してもノックダウンがなるべく少ないsiRNA」についてもう少し触れます。ポジティブコントロール編で触れたとおり、siRNAの作用メカニズムは、(1)siRNAの細胞への導入、(2)RISCの形成、(3)ターゲットRNAの切断、というように大きく3つに分けられます(図1)。ネガティブコントロールsiRNAは、通常のsiRNAと同様の短い二本鎖RNAです。通常のsiRNAと同じメカニズムにしたがって細胞に導入され、RISCを形成します。しかしながら、ネガティブコントロールsiRNAの配列は細胞内の遺伝子配列との類似性がない(極めて低い)ため、特定のRNAの認識・切断が十分に低いレベルとなります。  通常のsiRNAと同じメカニズムに従うという性質は、ネガティブコントロールとして重要です。なぜかというと、(1)siRNAの細胞への導入、(2)RISCの形成、という各ステップにおいて、mRNAの発現レベルへの影響が可能性として考えられるためです。このことは、ターゲット遺伝子(mRNA)のノックダウンを正しく評価するために、ネガティブコントロールを使う理由でもあります。通常のsiRNAと同じメカニズムに従いながら、遺伝子発現レベルへの影響が最小であることが、ネガティブコントロールとして重要な点といえます。

図1 RNAiのパスウェイ

図1 RNAiのパスウェイ
細胞内で短いRNA二本鎖(siRNA)は構成因子とともにRISCを形成します。RISCはATPによって活性化されると(RISC*)、ターゲットのmRNAを認識し切断します。

ネガティブコントロールsiRNAの種類

Thermo Scientific DharmaconのネガティブコントロールsiRNAには、いくつかのバリエーションがあります。

  • Non-Targeting siRNA: 対象とする細胞の既知遺伝子配列との類似性が最小の配列である、いわゆるネガティブコントロールsiRNAです。ヒト、マウス、ラットの細胞で使えます。siGENOMEとON-TARGETplusの各製品があります。
  • RISC-Free コントロールsiRNA: RISCと相互作用しないsiRNAです。siRNAを化学修飾することでRISCとの相互作用が抑えられています。RISC と相互作用しないので本来の意味でのネガティブコントロールsiRNAではありません。RISCによる影響を評価するときに使います。
  • 蛍光標識トランスフェクションインジケーター: 蛍光標識されたsiRNAです。細胞導入後、核に移行する性質を持つため細胞導入をより確実にチェックできます。蛍光色素はGreenとRedの2種類がありますが、蛍光顕微鏡やFACSでの利用にはGreenが向いています(製品名:siGLO Green Transfection Indicator, siGLO Red Transfection Indicator)。いわゆるネガティブコントロールではありません。

蛍光標識トランスフェクションインジケーターは、細胞導入の確認が容易なためトランスフェクション条件の検討の際に役立ちます。また、特定の遺伝子をターゲットとする通常のsiRNAと干渉しないため、同時に細胞に導入する使い方もできます。

確実な結果を得るために

siRNA実験においてコントロールsiRNAはとても重要です。蛍光標識したsiRNAは、トランスフェクション条件検討の際に便利です。ポジティブコントロールsiRNAとネガティブコントロールsiRNAを適切に使って、確実な実験結果を得ていただきたいと思います。コントロールsiRNAの選択・使い方については文献(K. Huppi, S. E. Martin, N. J. Caplen, Mol. Cell, 17 (2005), 1-10)でも触れられていますのでご参照ください。

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