Dharmaconテクニカルサポート
第3回 トランスフェクション方法

バイオサイエンスメールでは8回シリーズで、お客様の実験サポートをテーマにした記事をお送りしています。前号までは、RNAi実験で信頼性の高い良好な結果を得るために有効なコントロール実験の組み立て方と製品の使用方法をお送りしましたが、今号では、siRNAを細胞に導入するトランスフェクション法についてご説明します。

(執筆担当 サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)バイオサイエンス事業本部 牛山)

siRNAの細胞導入

siRNAはshort interfering RNAあるいはsmall interfering RNAの略ですが、その言葉の通り、長さが21塩基前後の短い二本鎖のRNAです。このsiRNAが細胞内に導入されることでRNAi(RNA interference)が誘導されます。siRNAを細胞に導入する、いわゆるトランスフェクションは、siRNAを用いる実験で最も重要なステップです。siRNAのトランスフェクション方法としては、リピッド系トランスフェクション試薬を用いる方法と、エレクトロポレーションを用いる方法の2つがよく使われています。これらの方法とともに、最近使われ始めた、細胞自体のメカニズムを用いる方法について、各方法の特徴を取り上げます。また、siRNAとは異なりますが、shRNAを用いるRNAi誘導法についても簡単に触れます。

リピッド系トランスフェクション試薬

最も一般的なトランスフェクション方法です。各社より販売されているトランスフェクション試薬を使います。試薬の成分は通常非公開ですが、基本的にカチオン性の脂質をベースにしていることが多いようです。単にリピッドと呼ばれることもあります。トランスフェクション試薬とsiRNAをあらかじめ混合して複合体を形成してから、細胞に投与して使います。メリットとしては、特別な装置が不要のため技術的・コスト的に導入が容易なことと、実績のある方法のため、実験で使う細胞の実例が文献等で入手し易いことがあります。一方、注意点としては、細胞の種類によってはトランスフェクション試薬との組み合わせに相性があり、なかにはsiRNAの導入が困難な細胞があることがあります。また、トランスフェクション試薬自体にも多少の細胞毒性があるため、実験次第では結果に影響する可能性がある点にも注意が必要です。サーモフィッシャーサイエンティフィックでは、トランスフェクション試薬としてDharmaFECT 1~4(特性の異なる4種類を細胞にあわせて使用)を販売しています。

エレクトロポレーション

電気的な刺激により細胞膜に小さな穴を開け、siRNAを導入する方法です。専用の装置(および試薬)が必要になりますが、リピッド系トランスフェクション試薬ではトランスフェクションが困難な細胞においても、siRNAを比較的高い効率で導入できる場合があることがメリットです。このためエレクトロポレーション法は、トランスフェクション試薬を使う方法とは相補的な方法として使われています。注意点としては、トランスフェクション試薬を使う場合と比べて、細胞の生存率が低くなる傾向があることと、高濃度のsiRNAが必要になることがあります。

細胞自体の導入メカニズム

細胞自体に備わるメカニズムを用いてsiRNAを導入する、最近開発された新しい方法です。siRNAとしては、細胞導入のためのメカニズムが有効となるような特殊な化学修飾が施されたsiRNAを用います。製品としては、サーモフィッシャーサイエンティフィックからAccell siRNAラインナップが販売されています。専用のsiRNAを専用の培地と共に細胞に投与して使います。トランスフェクション試薬は使いません。メリットとしては、従来トランスフェクション困難な細胞においても導入実績があること、トランスフェクション試薬由来の細胞毒性が原理的にないこと、特別な装置が不要なことがあります。トランスフェクションに伴う毒性がないため、複数回の継続したトランスフェクションも可能です。新しい技術のため実績不足の面がありましたが、次第にAccell siRNAを用いた論文も報告され始めています。

shRNAを用いるRNAi実験

shRNAはshort hairpin RNAの略で、二本鎖RNAの領域とループ領域からなるヘアピン構造のRNAです。shRNAを発現するベクターを用いて、細胞内でsiRNAを誘導するRNAi実験方法です。shRNAは細胞内でDicerによる切断を受けsiRNAが生じます。このsiRNAはトランスフェクションによって導入されるsiRNAと同じように、ターゲット遺伝子の発現をノックダウンします。shRNA発現ベクターを細胞に導入する方法としては、ベクター自体をそのままトランスフェクションする方法と、ウイルス粒子にパッケージし、ウイルスの感染によって導入する方法があります。メリットとしては、shRNA発現ベクターを用いた場合、shRNAが発現する限りRNAi効果が持続することがあります。また、ウイルス感染による導入方法は、siRNAのトランスフェクションが困難な細胞に対しても有効性が高いこともメリットといえます。一方、shRNAではDicerによってsiRNAが生じるため、目的の配列をもったsiRNAを誘導することは必ずしも容易でない点には注意が必要です。サーモフィッシャーサイエンティフィックでは、ウイルス粒子にパッケージした製品として、SMARTvectorを販売しています。

効率よくsiRNAを導入するために

siRNA実験において、siRNAを効率よく細胞に導入することは実験の鍵といえます。導入方法にはさまざまな方法がありますが、実験で使う細胞の種類や実験の内容、各種トランスフェクション方法の特徴に合わせて最適な方法を選択します。いずれの方法にしても、適切なポジティブコントロールsiRNAを用いて、トランスフェクション効率が高くなるように条件を至適化することが重要です。

バイオサイエンスメール その他の記事