Dharmacon テクノロジー
(第4回 siSTABLE修飾)
適切な配列をデザインすることによって、ノックダウン効果・特異性・持続性の高いsiRNAを得ることができます。しかし、siRNAによって引き起こされるノックダウン効果は、ターゲット遺伝子の転写産物の発現量・分解速度・発現制御の影響を受けます。たとえば、半減期の長い転写産物をターゲットとする場合、あるいは、明瞭なフェノタイプを観察するために長期間におよぶノックダウンが必要となる実験では、7~14日以上の遺伝子サイレンシングが必要になることがあります。このような場合に有望なストラテジーとして、生体内での安定性を向上する化学修飾であるsiSTABLE修飾の利用について取り上げます。
(執筆担当 サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)バイオサイエンス事業本部 広瀬)
はじめに
リボザイムやアンチセンスオリゴを用いた研究により、研究および治療ツールとしての核酸試薬の利用には限界のあることが明らかになりました。それは、RNAやDNAは、細胞内や血清中に存在する多量のヌクレアーゼにより速やかに分解されるためです。ヌクレアーゼは、1本鎖および2本鎖オリゴヌクレオチドの両方に作用します。ヒト膵臓のRNaseおよび関連するヌクレアーゼを用いた研究から、ヌクレアーゼによるRNAの分解は、オリゴヌクレオチドのリン酸ジエステル結合への協調的な攻撃により起こることが分かりました。そのメカニズムは2段階のプロセスからなります(図1)。可逆的なリン酸転移反応により2’, 3’シクロリン酸が生成され、続いて環状構造が加水分解されることによりリボースの3’位にリン酸末端が生じます。これらの研究は、RNase反応に関わるプロセスを理解し、RNaseによるsiRNAの分解を阻害する化学修飾を探索する上で大変役に立ちました。

図1 ヌクレアーゼによるRNA分解の一般的なメカニズム
RNAは2', 3'シクロリン酸中間体を経由した2つのステップにより分解されます。
安定化修飾をsiRNAに導入するにあたっては、修飾を施したsiRNAが未修飾のsiRNAと変わらぬノックダウン効果と特異性を保持していることが必須になります。また、化学修飾は、あらゆる配列のsiRNAにも適用可能で、細胞の生存率に影響を及ぼさないことが要求されます。細胞毒性がないことは、培養細胞およびin vivoの系でsiRNAを使用する際に特に重要です。サーモフィッシャーサイエンティフィックのsiSTABLE修飾は上記の要件をすべて満たしています。
siSTABLE修飾siRNAの安定性
siRNAの安定性を100%ヒト血清中で調べた結果を図2に示しました。従来型の未修飾siRNAはヒト血清中で数分以内に分解されるのに対し、siSTABLE修飾siRNAは非常に安定で、その半減期は約5日間であることが分かりました(表1)。ここで用いている100%ヒト血清という条件は非常に厳しいものです。たとえば、ウシ胎仔血清(FCSやFBS)はヌクレアーゼ活性が低いため、ヒト血清中よりも温和な条件になります

図2 siSTABLE修飾siRNAの安定性
siSTABLE修飾siRNAと32P標識した従来型siRNAについて、それぞれ1 µMの濃度にて100%ヒト血清中でインキュベートし、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動により各siRNAの安定性を経時的に調べました。従来型siRNAは100%血清中において5~10分以内に完全に分解されましたが、siSTABLE修飾siRNAは安定で、その半減期は100時間以上となりました。
| 表1. siSTABLE修飾の特性 | |
| ヒト血清(100%)中での半減期 | 85時間 |
| 配列選択性 | なし |
| 細胞毒性 | なし |
| 未修飾siRNAと比較したノックダウン効果 | 100% |
siSTABLE修飾siRNAのノックダウン効率
安定化修飾はあらゆるsiRNA配列に適用できる必要があります。機能性の高いsiRNA配列をデザインできても、ノックダウン効率を下げることなく安定化修飾を施すことができなければ、デザインが無駄になってしまいます。サーモフィッシャーサイエンティフィックのsiSTABLE修飾は、どのようなsiRNA配列にも適用可能で、siSTABLE修飾siRNAは従来型の未修飾siRNAと同等のノックダウン効果をもちます(図3)。

図3 siSTABLE修飾siRNAのノックダウン効率
siSTABLE修飾siRNAは0.01~100 nMの濃度範囲において、従来型siRNAとほぼ同等のノックダウン効果を示しました。
siSTABLE修飾siRNAの持続性
siSTABLE修飾を用いることにより、siRNAのノックダウン効果を持続させることができます。従来型siRNAによるノックダウン効果は、トランスフェクション後48時間をピークに徐々に消失していくのに対して、siSTABLE修飾siRNAによるノックダウン効果は7日以上持続しました(図4)。

図4 siSTABLE修飾siRNAのノックダウン効果持続性
ヒトCyclophilin B遺伝子をターゲットとするsiRNAをHEK293細胞へトランスフェクションしmRNAの発現量を測定しました。
siSTABLE修飾siRNAの特異性
siSTABLE修飾siRNAと従来型siRNAの特異性を比較検討しました(図5)。siRNAの導入により発現レベルが非特異的に低下する遺伝子の数は、siSTABLE修飾siRNAと従来型siRNAとで同程度でした。一方、発現レベルが上昇する遺伝子(その多くはストレス関連遺伝子)の数は、siSTABLE修飾siRNAを投与した場合では従来型siRNAを投与した場合よりも少なくなりました。つまり、siSTABLE修飾siRNAは従来型siRNAと同等もしくは上回る特異性を示しました。

図5 siSTABLE修飾siRNAの特異性
siRNA導入による遺伝子の発現量変動をマイクロアレイ解析で調べました。
siSTABLE修飾siRNAの細胞毒性
siSTABLE修飾siRNAと従来型siRNAの細胞毒性を比較検討しました(図6)。siSTABLE修飾の導入は、細胞の生存率にほとんど影響をおよぼさないことが分かりました。

図6 siSTABLE修飾siRNAの細胞毒性
ヒトCyclophilin B遺伝子をターゲットとするsiSTABLE修飾siRNAと従来型の未修飾siRNAをそれぞれHeLa細胞へトランスフェクションし、mRNA発現量と細胞毒性を評価しました。
最後に
以上の実験結果から、siSTABLE修飾siRNAは、安定化修飾をsiRNAに導入する際に必要とされる要件(従来型siRNAと同様のノックダウン効果・特異性、および長期の持続性・低細胞毒性)をすべてクリアすることが分かりました。また、siSTABLE修飾は、あらゆる配列のsiRNAに適用可能です。サーモフィッシャーサイエンティフィックのsiSTABLE修飾は、培養細胞およびin vivoの系で幅広くご使用いただけます。






