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第5回 トランスフェクション試薬を使わないAccell siRNAによるsiRNA実験
siRNAを細胞に導入するトランスフェクション方法としては、リピッド系のトランスフェクション試薬を用いる方法がもっとも一般的です。しかしながら、トランスフェクション試薬を用いた導入方法が向いていない場合があります。たとえば、トランスフェクション試薬によるsiRNA導入が困難な細胞株を使う場合です。初代培養細胞、神経細胞、免疫細胞などは、トランスフェクション試薬による導入が難しいといわれています。また、トランスフェクション試薬自体の細胞毒性が問題となる場合もあります。
Accell siRNAはトランスフェクション試薬を使わない、新しいタイプのsiRNAです(2008年発売)。Accell siRNAでは、特殊な化学修飾をsiRNAに導入することにより、siRNAが細胞に受動的に取り込まれる特性を持ちます。従来トランスフェクション試薬による導入が困難とされていた細胞への応用が期待され、実績が増えつつあります。また、トランスフェクション試薬を使わないため、トランスフェクション試薬に由来する細胞毒性がないという特長があります。ここではお客様からの注目度が高いAccell siRNAについてご紹介いたします。
(執筆担当 サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)バイオサイエンス事業本部 牛山)
さまざまな細胞でのsiRNA実験
Accell siRNAの大きな特長は、さまざまな細胞でのsiRNA実験を可能にすることです。初代培養細胞、神経細胞、免疫細胞など、従来トランスフェクションが困難とされていた細胞でも導入が確認されています。Accell siRNAで発現抑制が確認されている細胞を表1に示します。
| ヒト浮遊細胞 | 細胞数 (x 103 細胞 / well) | |
| Jurkat | T-Lymphocyte, Acute Monocytic Leukemia | 2.5-5 |
| THP-1 | Monocyte, Acute Monocytic Leukemia | 2.5-10 |
| IM-9 | Peripheral blood lymphoblast | 10 |
| ヒト体性幹細胞(Stem Cell) | 細胞数 (x 103 細胞 / well) | |
| Osteoblasts | From hMSC (Mesenchymal Stem Cell) | 30 |
| Adipocytes | From hMSC (Mesenchymal Stem Cell) | 30 |
| ヒト・マウス・ラット初代培養細胞 | 細胞数 (x 103 細胞 / well) | |
| HUVEC | Human, umbilical vein, endothelial | 2.5-10*1 |
| HUASMC | Human, primary smooth muscle | 2.5 |
| hMSC | Human, undifferentiated mesenchymal stem cells | 2.5 |
| PBMC | Human, peripheral blood mononuclear cells | 200 |
| T-cells | Human, Primary lymphocyte | 200 |
| NHA | Human, primary astrocytes | 1 |
| Hepatocytes | Mouse, liver | 10 |
| Neurons | Rat, primary striatum | 75 |
| Neurons | Rat, primary cortical | 75 |
| その他マウス・ラット細胞株 | 細胞数 (x 103 細胞 / well) | |
| 3T3 NIH | Mouse, embryo, fibroblast | 2.5 |
| ES-D3 | Mouse, pluripotent embryonic stem cells | 2.5-5 |
| 3T3 L1 | Mouse, embryo, fibroblast | 2.5 |
| C2C12 | Mouse, muscle myoblast | 10-20 |
| H9C2 | Rat, heart, myocardium | 2.5 |
| PC12 | Rat, pheochromocytoma | 5-20*2 |
| Rat2 | Rat, embryo, fibroblast | 10 |
| ヒト接着細胞株 | 細胞数 (x 103 細胞 / well) | |
| SH-SY5Y | Neuroblastoma | 2.5-10 |
| IMR32 | Neuroblastoma | 10*2 |
| LAN5 | Neuroblastoma | 10*2 |
| HeLa | Cervix, adenocarcinoma | 2.5-10 |
| HeLa S3 | Cervix, adenocarcinoma | 2.5-10 |
| LNCap | Prostate, metastatic | 5-30 |
| MCF10a | Epithelial, mammary gland | 2.5-10 |
| 293T | Epithelial, kidney | 2.5 |
| MCF-7 | Breast cancer | 2.5-10 |
| SK-BR3 | Breast cancer | 2.5 |
| Huh7 | Hepatoma | 5-10 |
| GTM-3 | Glaucomatour trabecular meshwork | 2.5 |
| DU145 | Prostate, mets, brain carcinoma | 2.5 |
| HT1080 | Connective tissue, fibrosarcoma | 2.5 |
| DLD-1 | Epethelial, colon colorectal adenocarcinoma | 5-10 |
| HepG2 | Liver, hepatocellular carcinoma | 2.5 |
| U2OS | Bone, osteosarcoma, epithelial | 5-20 |
| A-375 | Epithelial, skin, malignant melanoma | 5-20 |
| U87MG | Glioblastoma | 2.5-5*3 |
| HEK293 | Kidney, embryonic | 2.5-10 |
| MIA Paca-2 | Pancreas, carcinoma | 5-20 |
| NCI/ADR-RES | Multi-drug resistant breast cancer | 5-20 |
| OVCAR-3 | Ovary, adenocarcinoma | 5-20 |
| SKOV3 | Ovary, carcinoma | 5-20 |
| A549 | Epithelial, lung, carcinoma | 7 |
表1 Accell siRNAで発現抑制が確認されている細胞
各細胞は 96 well プレートにプレーティングし、1μM Accell siRNAを含むAccell siRNA delivery mediaを用いて培養しました。
ヒト細胞にはAccell Cyclophilin B Control siRNA、マウス・ラット細胞にはAccell GAPDH Control siRNAを導入しました。
*1 fibronectinコートプレートで培養。HUVEC培地(2% FBS添加)を用いた方が細胞生存率が高かった。
*2 collagen IVコートプレートで培養。
*3 Accell siRNA delivery mediaによる培養では細胞形態に影響がみられた。影響は通常の成長培地に戻すと可逆だった。
Accell siRNAは、独自のSMARTselectionアルゴリズムと、microRNA様のオフターゲット効果を低減する最新のseed領域フィルターによって、高いノックダウン効果と特異性をもつように配列デザインされています。また、センス鎖、アンチセンス鎖の両鎖に対して独自の化学修飾を行い、オフターゲット効果を低減しています。さまざまな細胞でAccell siRNAを用いたときの、ノックダウン効果と細胞生存率を図1に示します。高いノックダウン効果と、十分な細胞生存率が得られていることがわかります。

図1 さまざまな細胞において種々のターゲット遺伝子を効果的にノックダウン
各種細胞(Hela S3、Rat-2、3T3L1、Jurkat、THP-1、NHA、SH-SY5Y)について、Accell siRNA delivery media中で各ターゲット遺伝子に対する 1 μM Accell SMARTpool siRNA あるいはAccell Non-Targeting control(NTC)を導入しました。72時間後のノックダウン効率と細胞生存率を示しています。
低い細胞毒性
Accell siRNAではトランスフェクション試薬を用いないため、トランスフェクション試薬に由来する影響を受けません。一般的なトランスフェクション試薬としては、リピッド系の試薬が使われています。トランスフェクション試薬の種類によって差はあるでしょうが、通常ある程度の毒性は避けられないとされています。トランスフェクション試薬(DharmaFECT 1)とAccell siRNAの毒性について検討した結果を図2に示します。Accell siRNAでは炎症関連タンパク質の発現量が低く抑えられていることがわかります。

図2 炎症関連タンパク質の発現量の比較
HeLa S3細胞を、リピッド系トランスフェクション試薬(DharmaFECT 1)のみ、1 μM Accell siRNA (#1, 2, 3, 4; diazepam binding inhibitorをターゲット)、Accell siRNA delivery mediaのみでそれぞれ処理しました。72時間後の培養上清についてSearchLight arrayプラットフォーム(アレイ型ELISA)を用い、IL-8および8種類のインターフェロン応答因子(IL-1α, IL-1, IL-2, IL-6, IL-10, IL-12p70, IFNγ, TNFα)の発現を解析しました。
Accell siRNAのより詳しい情報
Accell siRNAは従来siRNAトランスフェクションが困難といわれていた細胞でも導入が確認されており、RNAi実験の適用範囲を広げる試薬として大変有用であると考えられます。Accell siRNAの詳細については下記に情報がありますのでぜひご覧ください。
- 製品プロトコル : Thermo Scientific Accell siRNA
- 製品カタログ : Thermo Scientific Accell siRNA
- ホームページ : Thermo Scientific Accell siRNA
次回はAccell siRNAを使うときの実験上のポイントについて取り上げる予定です。






