Dharmacon テクノロジー
(第6回 Accell siRNAによる長期遺伝子サイレンシング)

サーモフィッシャーサイエンティフィックでは、さまざまなテクノロジーを応用して、 お客様のニーズに応えるThermo Scientific Dharmacon製品を開発しています。 Dharmaconテクノロジーの第6回では、「Accell siRNAによる長期的な遺伝子 サイレンシング」についてご紹介します。
(執筆担当 サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)バイオサイエンス事業本部 広瀬)

はじめに

siRNAを細胞に導入する方法としては、カチオン性のリピッド系トランスフェクション試薬を用いる方法が一般的です。しかし、リピッド系トランスフェクション試薬ではsiRNAの導入が困難な細胞があったり、リピッドにより細胞に悪影響が生じることがあります。
 Thermo Scientific Dharmacon Accell siRNA(以下Accell siRNA)は、トランスフェクション試薬を用いずに細胞に導入することのできる全く新しいタイプのsiRNAです。Accell siRNAには特殊な化学修飾が施されたヌクレオチドを導入しており、結果として、さまざまな細胞に受動的に取り込まれます。従来トランスフェクション試薬による導入が困難であった細胞(初代培養細胞・神経細胞・免疫細胞など)での実験例も増えつつあり、さまざまなお客様から注目されています。
Accell siRNAは、配列デザインおよび化学修飾によりオフターゲット効果も同時に低減しており、ターゲット遺伝子の発現を特異的にノックダウンします。また、トランスフェクション試薬を使わないため、細胞毒性や炎症応答を最小限に抑えることができます。これらの特長からAccell siRNAを繰り返し細胞へ投与することにより、長期的な遺伝子ノックダウンが可能になりました。

長期的な遺伝子ノックダウンを簡便に実現するAccell siRNA

ターゲット遺伝子がコードするタンパク質の機能を正確に評価するために、以下の理由から長時間にわたって遺伝子ノックダウンを引き起こさないと解析できない場合があります。

(1) ターゲット遺伝子のコードするタンパク質が細胞内に豊富に存在する。

(2) タンパク質の半減期が長く、細胞内に安定して存在する。

(3) ターゲット遺伝子を発現抑制しても、目的の表現型が現れるまでに時間がかかる。

このような場合に、リピッド系トランスフェクション試薬を用いて連続的に複数回のトランスフェクションを行う実験アプローチでは、多くの場合、細胞毒性や炎症応答を引き起こす可能性があります。
また、ウイルスベクターを用いた長期的な遺伝子ノックダウンもよく利用される手法ですが、コストや時間がかかるというデメリットがあります。これらの問題点を簡便に解決して、長期のサイレンシング実験を可能にしたAccell siRNAを用いた実験の流れを説明します。

Accell siRNAを用いた長期的な遺伝子ノックダウンのワークフロー

Accell siRNAを用いて長期的な遺伝子ノックダウンを実現する方法の概略を下図に示しました。細胞をトリプシン処理し、細胞数をカウント後、通常の培地(血清やサプリメント、抗生物質を含む)で24時間培養します。次に、培地をAccell siRNAとAccell delivery mediaとの混合溶液(Accell delivery mix)に代えてさらに培養します。この24-48時間の培養過程において、細胞内への受動的なトランスフェクション(トランスポート)が進行します。そのあとAccell delivery mixを通常の培地と置換し、24-48時間培養を続けます。細胞がコンフルエントになる前に細胞を分け、上述のAccell siRNAの導入プロトコルを再び行います。細胞がコンフルエントになるまでに時間を要する場合には、細胞を分けずにAccell delivery mixを添加することも可能です。一般に、細胞の継代は用いる細胞によります。また、通常の培地とAccell delivery mixとを繰り返し交換して培養しても、細胞への悪影響は最小限に抑えられます。

図1 Accell siRNAの繰り返し導入による長期的な遺伝子ノックダウンの概略

図 Accell siRNAの繰り返し導入による長期的な遺伝子ノックダウンの概略
 細胞を通常の培地(血清やサプリメント、抗生物質を含む)で培養後、培地をAccell siRNAとAccell delivery mediaとの混合溶液(Accell delivery mix)に代えて培養を続けます。24-48時間後、delivery mixを通常の培地と置換し、細胞がコンフルエントになる前まで培養します。そのあと細胞を分け、上述のAccell siRNAの導入のプロトコルを再びおこないます。

最後に

上述したように、Accell siRNAを用いることにより、従来の手法では実験が困難であった生物学上の問題解決に、より多くの細胞株を対象にして取り組むことができます。次回のDharmacnテクノロジーでは、Accell siRNAを用いた長期的な遺伝子ノックダウンの具体例をご紹介します。

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