Dharmacon テクノロジー
(第7回 Accell siRNAによる長期遺伝子サイレンシング2)

サーモフィッシャーサイエンティフィックでは、さまざまなテクノロジーを応用して、 お客様のニーズに応えるThermo Scientific Dharmacon製品を開発しています。 前回のバイオサイエンスメールでは、新しいsiRNAテクノロジーであるAccell siRNAを用いた長期的な遺伝子ノックダウンの方法をご紹介しました。Accell siRNAは、トランスフェクション試薬を用いることなく、初代培養細胞や神経細胞、免疫細胞などさまざまな細胞へ導入することができます。Dharmaconテクノロジーの第7回では、Accell siRNAを用いた長期的な遺伝子ノックダウンの具体例をご紹介します。
(執筆担当 サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)バイオサイエンス事業本部 広瀬)

PPIBをターゲットとするAccell siRNAを用いた長期的な遺伝子ノックダウン

Accell siRNAを用いた長期的な遺伝子ノックダウンの実証実験として、ハウスキーピング遺伝子であるPPIB(Cyclophilin B、NM_000942)をターゲットとするAccell siRNA(Accell PPIB siRNA)を、神経芽細胞腫 SH-SY5Y 細胞に繰り返し導入しました。Accell PPIB siRNAは、3種類の濃度(100 nM、500 nM、1 µM)にて導入し、3、7、11、15、19日後のmRNA発現レベルをbranched DNA(bDNA: Panomics)を用いて調べました。実験ではAccell Non-targeting Control siRNA #1をネガティブコントロールとして用いました。また、siRNAを導入せず培地の交換や継代操作のみを行った細胞に、GAPDHをターゲットとするAccell siRNAを継代ごとに用い、細胞のAccell siRNA導入に関するコントロールとしました。
図1に示すように、Accell siRNAを用いることによって、長期的な遺伝子ノックダウンを効率よく実現することができました。Accell PPIB siRNAによる遺伝子ノックダウンは濃度依存的で、1 µMにおいて70%以上のノックダウン効果が見られました。5回の継代(19日間)を通して細胞の生存率は80%程度でした。また、HeLa細胞を用いて同様の実験を行い、30日間にわたる遺伝子ノックダウンを実現することができました(図2)。

図2 Accell siRNAを用いた長期的な遺伝子ノックダウン(その1)

図1 Accell siRNAを用いた長期的な遺伝子ノックダウン(その1)
 ウェル(96ウェルプレート)あたり5,000個のSH-SY5Y 細胞をプレーテイングし、通常の培地中で24時間インキュベートしました。細胞を通常の培地(血清、サプリメント、抗生物質を含む)で培養後、培地をAccell PPIB siRNA(100 nM、500 nM、1 µM)あるいはAccell GAPDH(1 µM)とAccell delivery mediaとの混合溶液(Accell delivery mix)に置き換えてさらに培養しました。Accell Non-targeting Control siRNA #1(NTC; 100 nM、500 nM、1 µM)をネガティブコントロールとして用いました。48時間後、Accell delivery mixを通常の培地と置換し培養を続けました。以降、上述のAccell siRNAの導入のプロトコルを繰り返しました。導入3、7、11、15、19日後のターゲット遺伝子のノックダウン効率と細胞生存率について、それぞれbranched DNA (bDNA: Panomics)とalarmarBlue (BioSource) を用いて調べました。Accell siRNAを導入せず培地の交換操作のみ行った細胞をコントロールとしました(UT)。

図2 Accell siRNAを用いた長期的な遺伝子ノックダウン(その2)

図2 Accell siRNAを用いた長期的な遺伝子ノックダウン(その2)
 ウェル(96ウェルプレート)あたり10,000個のHeLa細胞をプレーテイングし、通常の培地中で24時間インキュベートしました。細胞を通常の培地(血清、サプリメント、抗生物質を含む)で培養後、培地をAccell PPIB siRNA(1 µM)とAccell delivery mediaとの混合溶液(Accell delivery mix)に置き換えてさらに培養しました。Accell Non-targeting Control siRNA #1(NTC; 1 µM)をネガティブコントロールとして用いました。24時間後、Accell delivery mixを通常の培地と置換し培養を続けました。以降、上述のAccell siRNAの導入のプロトコルを繰り返しました。導入2、6、10、14、18、22、26、30日後のターゲット遺伝子のノックダウン効率と細胞生存率について、それぞれbranched DNA (bDNA: Panomics)とalarmarBlue (BioSource) を用いて調べました。

Accell テクノロジーとリポフェクション法の併用

Accell siRNAを用いて長期的な遺伝子ノックダウンを行った細胞に、リピッド系トランスフェクション試薬を用いてsiRNAを導入できるかどうか調べました。Accell PPIB siRNAで10日間にわたって処理したHeLa細胞に、GAPDHをターゲットとするsiGENOME siRNA(siGENOME GAPDH siRNA)をトランスフェクションしました。Accell PPIB siRNAとsiGENOME GAPDH siRNAの両方を導入した細胞では、各遺伝子のmRNAレベルが少なくとも80%以上抑制されていました。この結果はAccell テクノロジーとスタンダードなリポフェクション法が併用可能であることを示しています(図3)。Accell siRNAテクノロジーを用いた実験デザインは柔軟に変更でき、また、Accell siRNAとリポフェクション法を併用することにより、複数の遺伝子を同時にノックダウンすることができます。

図3 Accell siRNAとリポフェクション法の併用

図3 Accell siRNAとリポフェクション法の併用
 HeLa細胞を10日間(3回の継代)にわたってAccell PPIB siRNA(1 µM)で処理しました。10日後に細胞を分配、再プレーテイングした後に、GAPDHをターゲットとするsiGENOME siRNA(100 nM)を、DharmaFECT 1(DF1)を用いてトランスフェクションしました。その24時間後に、PPIBとGAPDHのmRNAレベルをbranched DNA (bDNA: Panomics)を用いて調べました。

まとめ

比較的短時間の遺伝子ノックダウンを目的とするときは、Accell siRNA実験条件の至適化はほとんど不要ですが、長期的な遺伝子ノックダウンを行うときは、細胞にあわせてプロトコルを至適化する必要があります。また、適切なコントロールを用いて細胞の生存率や生理状態をモニターし、Accell delivery mix中で繰り返し細胞を培養することによる細胞への影響を確認することが大切です。

最後に

研究のターゲットであるタンパク質の生体内での安定性が高いときや、アッセイ系の特性のため持続的な遺伝子サイレンシングが必要なときは、長期的な遺伝子ノックダウンが必要となります。上述したように、Accell siRNAを繰り返し用いることによって、30日間にわたる長期的な遺伝子ノックダウンを実現することができます。ご紹介したワークフローは細胞毒性が最小限に抑えられており、リポフェクション法との併用が可能です。リポフェクション法ではトランスフェクションが困難であるとされている細胞(初代培養細胞・神経細胞・免疫細胞)を扱っている研究者の方には、特にAccell siRNAをおすすめします。

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