Pierce テクニカルリソース(定量ウェスタンブロット解析における検量線作成とポイント)
テクニカルリソースでは、実験サポートをテーマにした記事をお送りしています。
第4回目のテーマは定量ウェスタンブロット解析における検量線作成とポイントです。これをテーマに取り上げたのは、先日、あるお客様から、化学発光検出の定量性についてお問い合わせをいただき、最後に、化学発光で定量する場合の重要なポイントを試薬メーカーとしても、もっと啓蒙して欲しいとご要望をいただいたためです。
長年にわたり化学発光検出試薬(WB用が9種類、ELISA用が2種類)を販売してきた当社としても、お客様からのこのようなご要望をいただけることに大変感謝しております。
本社原文の資料と併せて解説します。
(執筆担当 サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)バイオサイエンス事業本部 萬代)
はじめに
ウェスタンブロッティングはタンパク質の定性解析に広く利用されていますが、適切なスタンダード(内部標準)を用いることでタンパク質の定量解析にも利用できます。ウェスタンブロット解析では、まずSDS-PAGEにより細胞ライセートや体液サンプルなどの複雑なタンパク質混合物から、各タンパク質が分子量で分離された後、メンブレンに転写されます。メンブレン上に転写されたタンパク質は特異抗体と抗原抗体反応によって結合し、抗体に標識された蛍光物質やHRPやAPによって蛍光検出や化学発光検出されます。このようにウェスタンブロット解析では、SDS-PAGEでの分離やメンブランへの転写、さらに抗原抗体反応や基質との酵素反応など、検出までに様々な操作が行われるため、定量性を保つためには注意深く実験を進める必要があります。
標準曲線の作成
必要となるのはスタンダードやポジティブコントロールです。目的タンパク質の精製品を用意します。スタンダードは系列希釈して検量線の作成に用います。ポジティブコントロールは同一ゲルからの転写において転写効率に差異が生じないか確認するために用いますが、有色の分子量マーカーミックスで代用することもできます。スタンダードは希釈系列を調製して、サンプルと同一の前処理(還元・SDS化)を行います。コントロールに関してはゲル両端のレーンで泳動して、メンブレン全体の転写効率の均一性の確認に利用します。
イメージャーやスキャナーにより取り込んだイメージを用いて、スタンダードの既知濃度とそのタンパク質バンドのシグナル強度から、検量線を作成します。検量線に関しては、十分な線型性が得られる領域からダイナミックレンジを決定する必要があります。このダイナミックレンジ内においては、定量的な検出が可能となります。

図1 組み換え型IκBαのウェスタンブロット解析における線型領域の決定
パネル A: SDS-PAGEにより分離した組み換え型IκBαの希釈系列 (50-0.1 ng)をPVDFメンブランに転写してウェスタンブロット解析を行いました。組み換え型IκBαの検出はSuperSignal West Dura Substrateにより行いました。
パネル B: ウェスタンブロット解析におけるタンパク質バンドの発光シグナル強度はデンシトメーターにより決定、組み換え型IκBαの添加量に対してプロットすることで、線型領域(r2 = 0.99)におさまる検量線を作成しました。

図2 EGF処理したA431細胞の細胞ライセート中のIκBα定量ウェスタンブロット解析
パネル A: 既知濃度の組み換え型IκBα(rIκBα)をウェスタンブロットによる検量線の作成
L 1-6 には 0.15-0.012 ng の rIkBαが含まれます。
パネル B: EGF処理したA431細胞ライセートのウェスタンブロット解析結果
L1および2; EGFにより未処理のA431細胞、L3および4; 50 ng EGFにより処理(5分)したA431細胞、L5および6; 50 ng EGFにより処理(30分)したA431細胞、L7および8; 50 ng EGFにより処理(24時間)したA431細胞
パネル C: 組み換え型IκBαによる検量線 (r2 = 0.99)
パネル D: 定量ウェスタンブロット解析により決定したEGF処理時間とIκBα発現変動
標準曲線を作成する上でのポイント
一般的に、定量解析におけるバックグランドノイズはS/N比を低下させ、標準曲線の線型性を低下させます。線型性の低い、すなわち線型領域の狭い標準曲線ではダイナミックレンジも狭るため解析が難しくなり、最終的に定量精度も落ちます。このような場合、バックグランドノイズの原因になりうる各検出条件の検討が必要であり、ブロッキング条件や抗体濃度の最適化がバックグランドノイズの低下(シグナルノイズ比の向上)に有効です。
蛍光検出による定量ウェスタンブロット解析
定量ウェスタンブロット解析では目的タンパク質の濃度がダイナミックレンジ内に収まる必要があるため、特に目的タンパク質の発現量が未知のサンプルの場合、サンプルに関しても数系列に希釈して用いることがあります。一般的に蛍光検出法は化学発光検出法よりも感度は低くなりますが、ダイナミックレンジが広く、定量ウェスタンブロット解析に適した検出法です。
サーモフィッシャーサイエンティフィックでは蛍光ウェスタンブロット解析に最適なDyLight 549/649 Western Blotting Kit(22854)、DyLight 680/800 Western Blotting Kit (22855)もご用意しております。キットには蛍光標識二次抗体、蛍光分子量マーカーミックス、ブロッキング剤、低蛍光PVDFメンブレンが含まれています。
最後に
次号は、ウェスタンブロットや免疫組織検出などにおける抗体フラグメントの選択方法を取り上げる予定です。
参考文献
バイオサイエンスメールその他の記事
- 新製品紹介(1) 定量PCR試薬 Thermo Scientific Solaris QPCR 試薬
- 新製品紹介(2) 低コスト化学発光検出試薬 Pierce Western Blotting Kit
- 新製品紹介(3) 高速セミドライブロッター Pierce Fast Transfer System
- Themo Scientific HyClone 血清ロットチェックサービスのご案内
- Pierce 知っておきたい基礎技術(ウェスタンブロッティングにおけるストリッピング・リプロービング法)
- Dharmacon テクノロジー(神経芽腫細胞IMR-32におけるDharmacon Accell siRNAを用いたp53遺伝子の発現抑制)







