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Dharmacon テクノロジー
(初代神経細胞におけるThermo Scientific Dharmacon Accell siRNAを用いたRNAi実験)
サーモフィッシャーサイエンティフィックでは、さまざまなテクノロジーを応用して、お客様のニーズに応えるThermo Scientific Dharmacon製品を開発しています。
前号のDharmaconテクノロジーでは、神経芽腫細胞IMR-32におけるAccell siRNAを用いたRNAi実験例をご紹介しました。
今号では、初代神経細胞におけるAccell siRNAを用いたRNAi実験例をご紹介します。
(執筆担当 サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)バイオサイエンス事業本部 広瀬)
はじめに
初代神経細胞は、神経変性病研究用のモデル細胞系として広く使用されています。ニューロンは有糸分裂後の分化した細胞であり、特別な条件で培養されます。多くの初代神経細胞について、リピッドベースのトランスフェクション試薬による核酸導入効率が低いという問題があります。例えば、これらの細胞においてsiRNAを用いたRNAi実験を行うことは困難です。
初代神経細胞は、神経変性病研究用のモデル細胞系として広く使用されています。ニューロンは有糸分裂後の分化した細胞であり、特別な条件Accell siRNAは、トランスフェクション試薬を用いずに細胞に導入することのできる全く新しいタイプのsiRNAです。Accell siRNAには特殊な化学修飾が施されたヌクレオチドを導入しており、結果として、さまざまな細胞に受動的に取り込まれます。従来トランスフェクション試薬による導入が困難であった細胞(初代培養細胞・神経細胞・免疫細胞など)での実験例も増えつつあり、さまざまなお客様から注目されています。
今号のDharmaconテクノロジーでは、初代神経細胞へのAccell siRNAの導入事例として、ラットの初代培養皮質ニューロン(primary cortical neurons)へのAccell siRNAの導入をとりあげます。
初代培養皮質ニューロンへのAccell siRNA導入時の培養培地の検討
初代培養皮質ニューロンは培養条件に対して極めて感受的です。そこで、Accell siRNA導入時の培養条件がニューロンのviabilityに与える影響を調べました。発生18日目のラット胎仔から取り出した初代培養皮質ニューロン(1)をin vitroで4日培養したのち、Neurobasal media、Accell siRNA delivery media、B27を添加したAccell siRNA delivery media、Neurobasal mediaとAccell siRNA delivery mediaとの50:50の混合培地のいずれかで48時間さらに培養しました。その後、ニューロンのviabilityをMTTアッセイにより評価しました(図1)。

図1 初代培養皮質ニューロンへのAccelll siRNA導入時の培養培地の検討(その1)
発生18日目のラット胎仔から取り出した初代培養皮質ニューロンをin vitroで4日培養したのち、以下の異なる4種類の培地で48時間培養しました:Neurobasal media(NB)、Accell siRNA delivery media(AM)、B27を添加したAccell siRNA delivery media(AM + B27)、Neurobasal mediaとAccell siRNA delivery mediaとの50:50の混合培地(NB + AM)。MTTアッセイによりニューロンのviabilityを評価しました。
Accell siRNA delivery media、およびB27を添加したAccell siRNA delivery mediaにおいては、Neurobasal media のみで培養した場合と比べてviabilityが低下しました。しかし、Neurobasal mediaとAccell siRNA delivery mediaとの50:50の混合培地中で培養したニューロンのviabilityはそれほど低下しませんでした。そこで、Neurobasal mediaとAccell siRNA delivery mediaの混合比を変えて培養条件をさらに検討しました。
発生18日目のラット胎仔から取り出しin vitroで4日培養した初代培養皮質ニューロンに、Neurobasal mediaとAccell siRNA delivery mediaを異なる比率で混合した培地中で、1 µMのAccell Non-targeting pool(NTC)を導入しました。48時間後、NTCで処理したニューロンのviabilityを顕微鏡観察(図2A-D)およびMTTアッセイ(図2E)により評価しました。初代培養皮質ニューロンをAccell siRNA delivery mediaのみで培養した場合、viabilityは著しく低下しました(図2A,E)。Neurobasal mediaとAccell siRNA delivery mediaを異なる比率で混合した培地中で培養した場合、Neurobasal mediaのみで培養した場合と比べて、細胞の形態に大きな変化は観察されませんでした(図2B-D)。Accell siRNA delivery mediaの混合量が多いほどニューロンのviabilityは低下しましたが、50 %までであればviabilityはそれほど低下しませんでした。
次に、Neurobasal mediaとAccell siRNA delivery mediaを異なる比率で混合した培地が、Accell siRNA導入に与える影響を調べました(図2F)。Accell GAPD Control Pool (GAPD)の導入によって、全ての培地条件においてGAPD mRNAの発現量が著しく低下しました。Accell siRNA delivery mediaの混合量が多いほどノックダウン効率は高くなりました。以上の培養条件の検討結果に基づき、以降のAccell siRNA導入実験はNeurobasal mediaとAccell siRNA delivery mediaとの50:50の混合培地(至適培地)を用いて行いました。

図2 初代培養皮質ニューロンへのAccelll siRNA導入時の培養培地の検討(その2)
発生18日目のラット胎仔から取り出しin vitroで4日培養した初代培養皮質ニューロンに、Neurobasal mediaとAccell siRNA delivery mediaを異なる比率で混合した培地中で、1 µMのAccell Non-targeting pool(NTC)あるいはAccell GAPD Control Pool (GAPD)を48時間導入しました。NTCで処理した細胞の位相差顕微鏡観察像: Accell siRNA delivery media中(A)、Neurobasal mediaとAccell siRNA delivery mediaとの50:50の混合培地中(B)、Neurobasal mediaとAccell siRNA delivery mediaとの25:75の混合培地中(C)、Neurobasal media中(D)。細胞のviabilityはMTTアッセイにより(E)、ノックダウン効率はGAPD mRNAの発現量を測定することにより評価しました。
Dy547で標識したAccell GAPD siRNA (1 µM)を、至適培地中で初代培養皮質ニューロンに48時間導入しました。細胞を固定後、共焦点顕微鏡で観察しました。ほとんど全てのニューロン細胞へのAccell siRNA導入が確認できました(図3A,B)。また、神経細胞体の細胞質および神経突起へのsiRNAの局在が観察されました(図3C,D)。

図3 初代培養皮質ニューロンへのAccelll siRNA導入の確認
発生18日目のラット胎仔から取り出しin vitroで4日培養した初代培養皮質ニューロンに、Neurobasal mediaとAccell siRNA delivery mediaとの50:50の混合培地中で、Dy547で標識したAccell GAPD siRNA (1 µM)を48時間導入しました。細胞を固定後、共焦点顕微鏡(Zeiss LSM510)で観察しました。siRNAが神経細胞体および神経突起に局在することが確認できました。青色はHoechest染色された核です。スケールバー:10 µm
p53遺伝子の発現抑制によるβアミロイドペプチドの神経毒性の抑制
アルツハイマー病の主な原因物質であるβアミロイドペプチドは、神経細胞のアポトーシスを引き起こします。またp53は、βアミロイドペプチドによる神経毒性発現のメディエーターとして知られています(2)。そこで、初代培養皮質ニューロンにAccell siRNAを導入しp53遺伝子の発現を抑制することによってβアミロイドペプチドの神経毒性を抑制できるかを調べました。
p53 mRNAをターゲットとするAccell siRNAの導入により、p53 mRNAの発現レベルが60 %以上低下しました(図4A)。Accell siRNA導入開始から48時間後に、さまざまな濃度のβアミロイドペプチドをニューロンに添加し、48時間後(図4B)、72時間後(図4C)のviabilityをMTTアッセイにより評価しました。NTC siRNAを導入した場合と比べて、p53遺伝子の発現を抑制した初代培養皮質ニューロンのviabilityは有意に向上しました。βアミロイドペプチドの添加濃度が高くなるにつれ、p53遺伝子の発現抑制によるβアミロイドペプチドの神経毒性の抑制効果は低下しました。最も高い抑制効果を得られたのは、5 µMのβアミロイドペプチドを添加した場合でした。以上の実験から、Accell siRNAを用いたp53遺伝子の発現抑制によって、βアミロイドペプチドの神経毒性が抑制されることを、初代培養皮質ニューロンにおいて明らかにすることができました。

図4 Accell siRNAを用いたp53遺伝子の発現抑制による、βアミロイドペプチド添加後の初代培養皮質ニューロンのviabilityの向上
発生18日目のラット胎仔から取り出しin vitroで4日培養した初代培養皮質ニューロンに、Neurobasal mediaとAccell siRNA delivery mediaとの50:50の混合培地中で、1 µMのAccell Non-targeting pool(NTC)あるいはp53 mRNAをターゲットとするAccell SMARTpool siRNAを導入しました。導入開始から48時間後にp53 mRNAのノックダウン効率を評価しました(A)。Accell siRNA導入開始から48時間後に、さまざまな濃度のβアミロイドペプチドをニューロンに添加し、48時間後(B)、72時間後(C)のviabilityをMTTアッセイにより評価しました。**p < 0.01、#p < 0.05、t-test
まとめ
リピッドベースのトランスフェクション試薬によるsiRNA導入効率が低いといわれる初代神経細胞においても、至適化された条件でAccell siRNAを用いることによってRNAi実験が十分可能であることが明らかになりました。
参考文献
- Goslin, K., and Banker, G. (1989). Experimental observations on the development of polarity by hippocampal neurons in culture. J Cell Biol 108, 1507-1516.
- Fogarty, M. P., Downer, E. J., and Campbell,V. (2003). A role for c-Jun N-terminal kinase 1 (JNK1), but not JNK2, in the beta-amyloid-mediated stabilization of protein p53 and induction of the apoptotic cascade in cultured cortical neurons. Biochem J 371, 789-798.



