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Dharmacon テクノロジー
(Accell siRNAを用いたin vivo RNAi実験)
サーモフィッシャーサイエンティフィックでは、さまざまなテクノロジーを応用して、お客様のニーズに応えるThermo Scientific Dharmacon製品を開発しています。前号のDharmaconテクノロジーでは、初代神経細胞におけるAccell siRNAを用いたRNAi実験例をご紹介しました。
Accell siRNAは、トランスフェクション試薬を用いずに細胞に導入することのできる全く新しいタイプのsiRNAです。Accell siRNAには特殊な化学修飾が施されたヌクレオチドを導入しており、結果として、さまざまな細胞に受動的に取り込まれます。従来トランスフェクション試薬による導入が困難であった細胞(初代培養細胞・神経細胞・免疫細胞など)での実験例も増えつつあり、さまざまなお客様から注目されています。
今号では、Accell siRNAを用いたin vivoでのRNAi実験例をご紹介します。
(執筆担当 サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)バイオサイエンス事業本部 広瀬)
卵巣ガン異種移植マウスモデルへのAccell siRNAの投与
卵巣ガンによって死亡する患者は、他の女性生殖器官由来のガンで死亡する患者よりも多く、80年代初頭から死亡率は変化していません。現在広く行われている卵巣がんの治療では、腫瘍摘出後に、白金およびタキサンベースの抗がん剤を組み合わせた化学療法を行います。しかし、卵巣ガンであると診断された時にはすでにガンが転移していることが多いため、卵巣ガンの根治は困難です(1)。
卵巣ガンの発症メカニズムに関する分子レベルの研究が行われており、少なくとも7つのシグナル伝達経路が、50%以上の卵巣ガンの症例で活性化されていることが明らかにされています(2)。
Martignettiらは、ガン抑制遺伝子であるKruppel-like zinc transcription factor(KLF6)の発現量低下と、KLF6の選択的スプライシングによるアイソフォームであるKLF6-SV1の発現量増加が、卵巣ガンの進行および予後不良(抗がん剤耐性)と関連性があることを明らかにしました。実際、siRNAを用いてKLF6-SV1の発現を抑制することにより、さまざまなガン細胞株において、細胞増殖や浸潤・コロニー形成・血管形成が大きな影響を受けることが明らかにされています(3)。
Martignettiらは、KLF6-SV1をターゲットとするAccell siRNA(siSV1)を、卵巣ガン異種移植マウスモデル(4)に投与した時の影響を調べました。Accell siRNA(siSV1)を用いてKLF6-SV1の発現を抑制することにより、卵巣ガン細胞を腹腔内に投与したマウスの生存率が高まることが分かりました(5)。
また、白金ベースの抗がん剤であるcisplatinとAccell siRNA(siSV1)を組み合わせて投与することにより、cisplatinを単独で投与した場合よりも卵巣ガン細胞の増殖が抑えられ(図1)、生存率が高まることが明らかになりました。さらに、Accell siRNAやsiSTABLE siRNAを用いた一連のRNAi実験により、KLF6-SV1が新規の抗アポトーシスタンパク質であり、抗ガン治療の新たなターゲットとなりうることが示されました(5)。

図1 KLF6-SV1の発現抑制による卵巣ガン細胞の成長阻害
ルシフェラーゼを安定的に発現するSKOV3細胞(ヒト卵巣ガン細胞株)をヌードマウスの腹膜に移植しました。Accell siRNAネガティブコントロール (siNTC)+cisplatin、cisplatinのみ、KLF6-SV1をターゲットとするAccell siRNA(siSV1)+cisplatinを、同マウスの腹腔内に注入し、3週間後、蛍光in vivo イメージングシステムにより観察しました。siSV1とcisplatinを組み合わせて投与することにより、卵巣ガン細胞の増殖を効果的に阻害できることが分かりました。詳細は文献5をご覧ください。
まとめ
マウスへのAccell siRNA の投与実験により、卵巣ガンの治療時に、通常の抗がん剤投与に加えてRNAi薬剤を併用することが有効である可能性が示唆されました。Accell siRNAを用いたin vivoでのRNAi実験により、さまざまな疾病の発症メカニズムを個体レベルで明らかにできることが期待されます。
参考文献
- Goff BA., et al. Ovarian carcinoma diagnosis. Cancer, 2000. 89 (10): 2068–75.
- Bast RC., et al. The biology of ovarian cancer: new opportunities for translation. Nat. Rev. Cancer, 2009. 9: 415-428.
- Narla, G., et al. Targeted inhibition of the KLF6 splice variant, KLF6 SV1, suppresses prostate cancer cell growth and spread. Cancer Res, 2005. 65: 5761–5768.
- Mesiano S, et al. Role of vascular endothelial growth factor in ovarian cancer: inhibition of ascites formation by immunoneutralization. Am J. Pathol, 1998. 153:1249–56.
- Difeo A. et al. KLF6-SV1 is a novel antiapoptotic protein that targets the BH3-only protein NOXA for degradation and whose inhibition extends survival in an ovarian cancer model. Cancer Res., 2009. 69: 4733–4741.



