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Thermo Scientific PCR関連製品
Phire Plant Direct PCR Kitを用いた植物組織からのダイレクトPCR
サーモフィッシャーサイエンティフィックでは、さまざまなテクノロジーを応用して、お客様のニーズに応えるThermo Scientific製品を開発しています。
Thermo Scientific Phire Plant Direct PCR Kit は、DNAの抽出・精製をせずに植物サンプルから直接DNAを増幅するためにデザインされたキットです。今号では、Phire Plant Direct PCR Kitを用いて、さまざまな植物材料を対象にダイレクトPCRを行った実例を紹介します。
(執筆担当 サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)バイオサイエンス事業本部 広瀬)
はじめに
植物組織を用いてPCRを行う場合、通常、DNAの抽出・精製操作を初めに行います。しかし、この操作は、高価で毒性のある試薬を用いることが多く、手間がかかる上に、クロスコンタミネーションの可能性があります(文献1,2)。一方、Phire Plant Direct PCR Kitを用いた場合、DNAの抽出・精製操作を行うことなく、ターゲットDNA配列を容易にPCR増幅することができます。Phire Plant Direct PCR Kitは、PCR阻害物質に対して耐性の高いPhire Hot Start II DNA Polymerase と、植物用に至適化された専用の反応バッファーを含みます。今号では、Piko Thermal Cyclerおよび専用のUltra-Thin Wall (UTR) PCR vesselsと一緒にPhire Plant Direct PCR Kitを用いて、さまざまな植物材料を対象にダイレクトPCRを行った結果を紹介します。
材料と方法
- Phire Plant Direct PCR Kit
- 24-well Piko Thermal Cycler
- Piko PCR Plate
- 植物組織(図の説明に記載)
専用のマニュアル(PDF)にしたがってダイレクトPCRを行いました(詳細は図の説明に記載)。
結果と考察
Phire Plant Direct PCR Kitを用いて、さまざまな植物組織からミトコンドリアDNAあるいはゲノムDNA断片を増幅しました(図1)。精製したDNAをテンプレートとしてPCRを行った場合と同程度に1.5から3.5 kbのターゲット配列を増幅できることを確認しました。PCRに要した時間は50分から1時間23分で、短時間で完了することができました。

図1 0.5 mm リーフディスクからのダイレクトPCR
キットに添付されているHaris Uni-Coreを用いて葉組織(トウモロコシ、トマト、シロイヌナズナ)から採取した試料(0.5 mmのディスク)を、20 uLのPCR溶液に直接入れました。PCRは24-well Piko Thermal CyclerおよびPiko PCR Plateを用いて行い、PCR産物をアガロースゲル電気泳動法により分析しました。
M:サイズマーカー; +:精製したDNAを含むポジティブコントロール; -:DNAを含まないネガティブコントロール
Phire Plant Direct PCR Kitを用いて、トマトの種子からゲノムDNA上のSamDC遺伝子断片を増幅しました(図2)。Direct protocolおよびDilution protocolのいずれによっても、精製したDNAをテンプレートとしてPCRを行った場合と同程度に1.8 kbのターゲット配列を増幅できることを確認しました。

図2 トマト種子からのダイレクトPCR
Directプロトコル:殻を剥いだトマト種子をさまざまな大きさに砕き、20 uLのPCR溶液に直接入れました。Dilutionプロトコル:殻を剥いだ比較的大きめのトマト種子を 20uLのDilution Bufferに入れ、室温で3分インキュベートしました。その後、遠心後の上清から0.5 uL採取して20 uLのPCR溶液に直接入れるか、上清を10、100倍希釈した溶液を0.5 uL採取して20 uLのPCR溶液に直接入れました。PCRは24-well Piko Thermal CyclerおよびPiko PCR Plateを用いて行い、PCR産物をアガロースゲル電気泳動法により分析しました。
M:サイズマーカー; +:精製したDNAを含むポジティブコントロール; -:DNAを含まないネガティブコントロール
Phire Plant Direct PCR Kitを用いて、FTAカードに保存した植物組織から、ミトコンドリアDNA断片を増幅しました(図3)。いずれの組織からも1.0 から1.8 kbのターゲット配列を増幅できることを確認しました。

図3 FTAカードに保存した植物組織からのダイレクトPCR
植物組織を保存したFTA Gene Saver Card(1 mmのパンチアウトカード)を50 uLのPCR溶液に直接入れました。PCRは24-well Piko Thermal CyclerおよびPiko PCR Plateを用いて行い、PCR産物をアガロースゲル電気泳動法により分析しました。M:サイズマーカー;1.トウモロコシ(皮);2.キンギョソウ(花弁);3.ダリアパープル(花弁);4.ダリアピンク(花弁);5.エンドウ(葉) ;6.大豆(葉);7.トマト(葉);8.ダリアレッド(花弁) ;9.ダリアイエロー(花弁);10. DNAを含まないネガティブコントロール;11.シロイヌナズナ(葉)
Phire Plant Direct PCR Kitを用いて、シロイヌナズナの葉からゲノムDNA上のPRP39遺伝子断片を増幅しました(図4)。植物用に至適化したPhire Plant PCR Bufferを用いたダイレクトPCRにより、精製したDNAをテンプレートとしてPCRを行った場合と同程度に4.5 kbのターゲット配列を幅広いサンプル量にわたって増幅できることを確認しました。

図4 植物からのダイレクトPCR用に至適化した反応バッファー
シロイヌナズナの葉から、さまざまな直径のリーフディスク(0.35-0.75 mm)を採取し、20 uLのPCR溶液に直接入れました。PCRは、スタンダードのPhire Reaction Bufferあるいは植物用に至適化したPhire Plant PCR Bufferを含む反応液中で、24-well Piko Thermal CyclerおよびPiko PCR Plateを用いて行いました。PCR産物をアガロースゲル電気泳動法により分析しました。M:サイズマーカー; +:精製したDNAを含むポジティブコントロール; -:DNAを含まないネガティブコントロール
Phire Plant Direct PCR Kitを用いて、トウヒの根に付着したカビからDNA断片を増幅しました(図5)。予想された長さ(1.0 kb)のターゲット配列を、幅広いサンプル量にわたって、増幅できることを確認しました。

図5 植物の根に付着するカビ(Cenococcum)からのダイレクトPCR
トウヒの根から、さまざまな長さの根(0.5-1.0 mm)を採取し、50 uLのPCR溶液に直接入れました。PCRは、24-well Piko Thermal CyclerおよびPiko PCR Plateを用いて行い、PCR産物をアガロースゲル電気泳動法により分析しました。M:サイズマーカー; +:精製したDNAを含むポジティブコントロール; -:DNAを含まないネガティブコントロール
以上の結果から、Phire Plant Direct PCR Kitを用いることにより、DNA抽出・精製を行うことなく、さまざまな植物組織をそのまま用いてPCR増幅を行えることが確認されました。弊社では、多くの植物種でPhire Plant Direct PCR Kitを適用できることを確認しています。適用確認済みの植物種リスト(PDF)をご覧ください。
文献
- 1. Doyle, J.J. and Doyle, J.L. 1987. A rapid DNA isolation procedure for small quantities of fresh leaf tissue. Phytochemical Bulletin 19 (1): 11-15.
- 2. Kim, C.S. et al. 1997. A simple and rapid method for isolation of high quality genomic DNA from fruit trees and conifers using PVP. Nucleic Acids Research 25 (5): 1085-1086.



